「ひとは、なぜがんになるの?」
がんの原因としてよく知られているものに、タバコやアスベストなどがあります。一方で、その原因として、あまり認識されていないものに「遺伝要因」があります。がんの原因としての「遺伝要因」を知ると、"がんの遺伝"や"がんの家族歴"を理解することができます。
■がんについて
がんの統計’09によると、日本人の男性・女性ともにおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断されると推定されています。また、2007年にがんが原因で亡くなった方の数は、約33万6千人であったと報告されています。2007年の死亡データに基づいた累積生涯がん死亡リスクでは、男性のおよそ4人に1人・女性のおよそ6人に1人が、がんが原因で死亡すると推測されています1)。
このため、がんについては国家レベルで、原因、治療法、予防法についての研究が行われてきました。また、その成果として、多くのがんにおいて、早期に発見し、治療することが可能になってきました。
■がんとは?
ヒトの体をつくっている細胞は、常に調和のとれた増え方をし、その役割をはたします。しかし、いくつかの原因が重なった結果、正常な細胞が過剰に増殖する細胞に変化することがあります。このような細胞のうち、無秩序に増殖を続け、周囲の正常な細胞に損傷を与えるようになったものをがん細胞といいます。がんは、がん細胞の塊で悪性腫瘍とも呼ばれます。がんには次のような特徴があります。
1) 過剰に増殖する
2) 浸潤する(組織・臓器の中でしだいに広まっていく)
3) 転移する(他の組織・臓器に移り、そこでも増殖する)
がんが持つこのような特徴は、周囲の正常な細胞に損傷を与え、ときには臓器の機能や生命に影響をおよぼすことがあります。
■なぜ、がんになるのでしょう?(がんの「かけ算」)
「がんは、大きく分けて2つの原因がかけあわさった結果で発症する」ということができます。1つは環境要因で、もう1つは生まれつきもっている体質(遺伝要因)です。
環境要因には、食生活、飲酒・喫煙などの生活習慣、細菌などへの感染、大気や生活に使用する水の質などの生活環境、放射線や発がん物質にさらされるような職場環境などがあります。体質は、両親から受け継いだ遺伝子と関係しています。もちろん、現実にはそれほど単純な計算ではありませんが、この2つの原因を「かけ算」してある限界を超えたときに、がんになってしまう、ということなのです。
例えば、タバコやアスベストは、がんの原因(環境要因)として非常に重要なものであることが分かっています。しかし、同じ年数、同じ本数のタバコを吸った人に必ずがんが発症するというわけではありません。また、同量のアスベストを吸い込んだ人が全員がんを発症するというわけでもありません。同じ条件であっても、がんを発症する場合と発症しない場合があります。これは、人によって「かけ算」のもう一方である「体質」つまり遺伝要因が違うから、と考えられます。
がんの種類や発症した臓器によって、この「かけ算」に含まれる2つの原因―環境要因と遺伝要因―のうち、どちらがより大きな役割を占めるのか、その比率が違っているようです。環境要因が強く影響して発症するがんもあれば、遺伝要因が強く影響して発症するがんもあります。
■がんは、遺伝するのでしょうか?
がん細胞そのものは、親から子へ遺伝することはありません。また、多くのがんは、遺伝する病気ではありません。しかし、近年の研究によって、がんの発症にかかわる遺伝要因が明らかになってきました。
遺伝要因は、いわば、がんになりやすい体質といえます。遺伝要因は親から子へ遺伝することがあり、ご家族(血縁者)の中で共有していることがあります。そのため、がんの発症に遺伝要因が強く関与している場合、ご家族(血縁者)で複数の方にがんが発症する―「がんの家族歴」が見られることがあります。
これまでは、そのような遺伝要因を持つ場合、若いうちにがんが発症し、早期発見と早期治療が困難なことが少なくありませんでした。現在では、そのような遺伝要因を持つ可能性のある方は、早い時期から定期的な検診を受けることによって早期発見と早期治療ができれば、そのような遺伝要因を持たない人と同じように生活し、長生きできるようになりました。
参考文献:
1) 財団法人がん研究振興財団:がんの統計’09





