「遺伝性の乳がんや卵巣がんに関係している遺伝子があるの?」
病気の「遺伝要因」の中には、「遺伝子」のレベルで病気との関与を説明できるようになったものがあります。病気の原因が個人の「遺伝子」のレベルで分かることは、ひとりひとりの病気に合った治療や予防に役立ちます。ここでは、遺伝性の乳がん・卵巣がんの原因として同定されている遺伝子について解説しています。
■ BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子
乳がんや卵巣がんが多く見られる家系について調べた研究によって、乳がんや卵巣がんの発症と関連している2種類の遺伝子が同定され、それぞれ、BRCA1遺伝子(BRCA1)、BRCA2遺伝子(BRCA2)と名付けられました。これらの遺伝子のどちらかに、生まれつき病的変異があると、乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高くなることが分かっており、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」と診断されます。また、病的変異のある遺伝子は、親から子へ1/2(50%)の確率で受け継がれます。>詳しくはこちら
よって、家族(血縁者)の中に乳がんや卵巣がんを発症した方が複数見られることがあります。

■ 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群が疑われたら、必ず変異が見つかるの?
乳がんや卵巣がんが多く見られる家系であっても、乳がんや卵巣がんを発症した方に必ずBRCA1/2遺伝子の変異が見つかるわけではありません。
最近報告された日本人を対象にした研究結果によると、BRCA1/2遺伝子の変異が検出されたのは約27%(36/135症例)で、他の国々での報告と同程度以上でした1)。
この研究では、乳がんあるいは卵巣がんを発症したことがある方で、かつ第1度近親者または第2度近親者に少なくとも1人乳がんあるいは卵巣がん発症者がいる方が対象となっています(近親者についてはこちらをご参照ください)。乳がんや卵巣がんを発症された方の既往歴や家族歴の違いによって、変異の検出率に違いがあることも分かっています。
また、BRCA1/2遺伝子検査で変異が見つからなかったからといって、遺伝性の乳がんや卵巣がんでないと判断することはできません。それは、乳がんや卵巣がんの発症に関与している遺伝子が他にもあるかもしれないからです。
■ BRCA1/2遺伝子に変異があると乳がんになるの?
BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性が、必ず乳がんや卵巣がんを発症するわけではありません。しかし、これらの遺伝子のどちらかに変異がある女性では、変異がない女性と比較して次のような傾向があると海外では報告されています。
(1) 乳がんや卵巣がんを若い年齢で発症するリスクが高い
(2) 70歳までに乳がんを発症する割合は36~85%2)
(3) 70歳までに卵巣がんを発症する割合は、16~60%2)
(4) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に、もう片方の乳房にがんを発症する割合は、予防的な対応を行わなかった場合、BRCA1遺伝子の変異で43.4%、BRCA2遺伝子の変異で34.6%3)
(5) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に卵巣がんを発症する割合は、BRCA1遺伝子の変異で12.7%、BRCA2遺伝子の変異で6.8%4)
参考文献:
1)Sugano K, et al : Cross-sectional analysis of germline BRCA1 and BRCA2 mutations in Japanese patients suspected of hereditary breast/ovarian cancer.
Cancer Science, Vol.99,No.10,1967-1976, 2008
2)National Comprehensive Cancer Network:NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Genetic/Familial High-risk Assessment:Breast and Ovarian V.I.2010
3)Metcalfe KA et.al.:Contralateral Breast Cancer in BRCA1and BRCA2 Mutation Carriers. Journal of Clinical Oncology, Vol22,No.12,2328-2335,2004
4)Metcalfe KA et.al.:The risk of ovarian cancer after breast cancer in BRCA1 and BRCA2 carriers. Gynecologic Oncology, Vol96,222-226,2005






